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 ねりま猫では「里親」の語の見直しをはかります



人間の里親団体さんからのメール
2008年2月12日、ねりま猫に一通のメールが届きました。
とある人間の里親さんの団体の方からで、メールの趣旨は、「里親・里子という言葉を人間以外に使わないようにお願いしたい」という内容のものでした。
国語事典の用例を挙げ、里親・里子という言葉が、本来、人間同士の関係に使われるべき言葉であること、昨今、犬や猫のみならず、公園の里親、道路の里親、ミカンやリンゴの木の里親、というように、「飼い主、持ち主、管理人」という言葉で表現できるものに、安易に里親という言葉を使われているため、人知れず傷ついている人がいることを理解してほしい、というものでした。

動物の「里親さがし」をしておられる個人・団体は、現在無数に存在します。
そして、多くの団体や個人の方が、人間の里親・里子の団体・個人の方から、同様のメールやお手紙、要望を受け取っています。
ねりま猫のスタッフも、みなそのような問題があることを、メールを戴く前から認識していました。

ねりま猫の結論
結論から先に書きます。
ねりま猫では、「里親・里子」の言葉を、猫たちに使うことを、考え直し、言い換えをはかろうと思います。
ねりま猫スタッフおよび、関連の動物愛護にかかわる人たちとの意見交換の中から、この結論を導き出しました。

里親・里子の言葉を使ってきた理由
まず、なぜこれまでねりま猫で里親の語(里子という言葉は使っていないので)を使っていたか。
もちろん、これが、「新しい飼い主」の代替となる言葉としてすでにかなり昔から言い習わされてきており、一つの単語なのでとても便利である、という理由は最初にあります。
次に、人間における、実子でない他人の子を引き取り、養育する里親という制度や言葉に、無償の愛情や、やさしさを強く感じるから、あえて使いたい、という意見がありました。
そして、もとの飼い主、新しい飼い主、といった「飼い主」の語より、人間の親子関係のように、家族そのものになってほしい、という願いがこめられていました。

人間の尊厳を損なう言葉ではない
また、私たちは里親・里子などの言葉が、「もともと人間に使われる語であっても、動物に使うことで、人の尊厳を損なうものではない」という判断を持っています。
動物を指す言葉を人間に使うと、時に人としての尊厳を損なうことがあります。
しかし、人に対する言葉を、動物たちに「借りる」ことが、即、人間の尊厳を傷つけるかと問われれば、違うのではないか、と考えざるを得ません。

人の尊厳を損なう言葉は歴史的にあり、公共の場やTVをはじめとするマスメディアでは、使うことを自主規制している言葉が数多く存在します。また、それらの言葉が使われた生物の名前が、改名されたりしている現状もあります。

ですが、マスメディアの中でも、これらの言葉すべてを「使ってはいけない言葉」と認識しているわけではありません。
逆に、使うことを規制してしまうことで、歴史的な意味合いや、その言葉に込められた人の思いや愛着などもまるごと消し去ってしまうことに、「言論の自由」の観点から疑問を呈する考え方もあります。
いわゆる「言葉狩り」といわれることです。

さまざまな見解
それでもやはり、使うことで気持ちを害される方、傷つかれる方がいる以上、使うべきではない、という意見があります。
これも、人の気持ちを思いやるという人間の根本として、とても大事なことです。
逆に、その言葉を使わないようにすることで、「使ってはいけない言葉」という意識が強くなり、本来、動物の里親という言葉に人の尊厳を傷つける意味がないはずなのに、かえって悪い意味が生まれてきて、人を傷つけるようになるのでは、という意見も聞きました。

また、動物愛護を考える立場から、新しい見解も出てきました。
制度としての人間の里親・里子は、養子制度と違って仮の親子関係で、いつかは解消されるものでもあります。
訳あって、新しく家族を捜さねばならない動物たちには、最終的に「この子はうちの子です」の一言で、迎え入れてもらいたい。
今使っている、一時預かりという言葉こそが里親に該当するのでは、という見解です。

ねりま猫の方針
メールをいただいてから、ねりま猫スタッフはさまざまに議論し、考えました。
そして、その結果、「里親」という言葉を、見直してみよう、という考えに落ち着きました。
「決して、絶対に使わない」という言葉狩り的な発想ではなく、使って傷つく方がおられるなら、なるべくそのお気持ちを尊重したい。
そして、人間の親子にも負けない本当の愛情を持って、猫たちを新しい家族に加えていただきたい。

サイトの作成時点や、これまでの記事の中で、里親という言葉を多用してきました。
すでに、譲渡を待つ子も数頭という現在、すべてのサイト・ブログなどの語の改変はほぼ不可能でもあります。

そこで、可能な限りのサイトの中の言葉、新しいブログの記事などから順次、言葉の言い換えを実施しています。
言い換えをしてゆく中で、本当にこの言葉がふさわしいものなのかどうか、新しい、よい言葉があるのではないか。
そういうことを、「これからも考え続け、みなさんにも投げかけてみたい」そのように私たちは考えています。

なお、ねりま猫スタッフでは上記のように合意していますが、すべてのボランティアさんや、関係の方々が、同じように考えているわけではありません。
関連の方のブログなどには、この言い換えは、特に適用を求めておりません。

この件に関して、ご意見をいただくことがありましたら、可能な限りお返事は差し上げたいと思います。
ですが、建設的でないご意見には、お返事できかねる場合もございますことをお断りしておきます。



2008年4月25日 文責・ねりま猫 スタッフを代表して 亮子






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